私の修了論文: 発展途上国とトイレの話

のりおです。

いや〜、修了論文おわりましたね。
イデアスの教室で同級生と一緒に缶詰になって、論旨の持っていき方をあーでもない、こーでもないと相談する日々でした。健康維持のために毎日、ラジオ体操とかもしてました。
喉元すぎてみれば、「青春の追体験」って感じで、(当社比)キラキラした素敵な思い出として記憶に格納されそうです。

さて、わたしは途上国におけるコンポストトイレの導入への文化的懸念点というテーマで執筆しました。
もともとは、水問題全体、もしくは飲み水の獲得方法を研究しようと思っていたのですが、上水道の問題ってだいたい政府の計画より人口が増えすぎるとか、金が横領されるとか、政策やガバナンスによるものだな、と思うようになりました。そして水問題を調べていくうちに、文化的な要素が普及障壁となっているのは、むしろトイレなんじゃないか、という点に行き当たり、今回トイレについて調べることになったのです。
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というわけで、毎日トイレと人糞とケガレと下水について調べまくってました。

べっぴんのねぇちゃんもよれよれのおじさんも、金持ちも貧乏も、健やかなるものも病めるものも、みんなに平等に関係してくるのが排泄問題。
公衆衛生の改善が、途上国の経済発展に寄与することは実証されていますが、しかしまだまだトイレ問題が公に語られることは多くの人に恥ずかしいという感覚を与えます。途上国の政治家にとっても上水道整備というのは魅力的なアピールポイントですが、下水道整備について声高らかに宣言する人ってほんとにいません。

WHO/UNICEF Joint Monitoring Programmeによると、今現在でも世界の26億人が、衛生的なトイレにアクセスできていないと言います。そして、野外排泄...つまり野グソを常習的に行っているは、世界で10億人。多くないですか、この数。びっくり。
世界の、5歳以下の子供の主な死亡理由には「下痢」がはいっています。目下イエメンで猛威を振るっているコレラだって、健康体の人が普段の衛生に気をつけていれば蔓延することのない、弱い病原菌です。このビデオのように、野外排泄や手洗いをしないことがかなり大きなコレラの媒介要因なので、衛生管理をしっかりすれば、防げるはずなんです。




でも、例えば40年の人生の間ずっと、開放的な湖畔で「野グソ」をしてきて、急に臭くて暗くて狭いトイレを使え、って言われても、気が進まない人って多いんです。たとえ自分の健康のためにはその方がいいと頭では理解していても、心が、動かない。気が進まない。その他には、自分の家屋よりもトイレの建物が立派だったら、それをトイレ以外の用途に転用してしまったり。人間関係的に見ると、違う階層の人間とは同じトイレを使いたくないなんて言って、せっかくお金をかけて頑丈なトイレを使っても使われることなく終わることがあるのです。例えば、上記の理由でインドの政府主体で行われた大規模なトイレ普及計画は失敗しています。

インドは、世界最大の野外排泄人口を保有する国です。2014年時点で、日常的に野外排泄をする世界の人口数(10.08 億人)のうち、約 60%(約5.97 億人)をインドが占めているという結果を上記のJMPがレポートしています。お隣のパキスタンやバングラデシュではかなり状況が改善してきているのに。ちなみにJICAがインドのトイレ普及の現状を詳細にまとめているので興味があるかたはどうぞ。(果たして、興味がある人が居るのか)

他にも、世界には月経中の女性は「穢れている」から同じトイレを使いたくないとか、自分の義理の父やその兄弟と同じ空間で排泄するのは「タブー」だから同じトイレを使いたくないとか、様々な文化的理由でトイレの普及が阻害されています。トイレの普及、そして衛生環境の改善のためには、技術改善や啓発活動だけでなく、相手の文化を理解することが、とても大切になってきます。


ああ、私の修了論文、もしかしたら、イデアス日本人研修生27年の歴史のなかでも、最も論文の字面がキタナイかもしれない.....そして、自分でフィールドワークなどをしたわけではないので、新しい発見をできたかと言われると、「んー...壮大なまとめ学習かも」と思わざるをえません。

でも、自分ではとても意義のある時間で、今後も自分のキャリアのなかで公衆衛生を一つのテーマにしたいという意識を持つようになりました。


そういえば、トイレの普及に疑問をもったのには、西アフリカのトーゴ共和国で使われなくなったトイレを目撃したことにあります。

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トーゴのNGOが建設した共同ピット型(ボットン)トイレ


そもそもトイレを使う習慣のなかった場所のようで、周りを見渡せば子供達は道の端やゴミ山の脇で用を足し、男性は散歩の途中で、見知らぬ誰かの家の壁に向かって用を足し、泊めてもらっていた家の女性は庭に掘ったゴミ捨て穴に立ちション形式で用を足していました。
せっかく海外のNGOから寄付を集めて作ったのに、狭い、電気もない、臭い、さらにはドアも誰かに盗まれてしまった、ボットン式のトイレ。あのトイレは、どんな要素があったら地元の人に継続して使われて、みんなの健康を改善する役割を果たすことができていたんだろう。修了論文を書きながら、ずっと頭のなかで問い続けていました。

こういう原体験は、研究のモチベーションになりますね。

私が修了論文を書く時の参考として使用した文献の著者現駒澤大学の西村祐子氏のブログ記事にもちょっと古いですが、色褪せない力強さがあります。

人格や判断基準、何に熱意を注ぐかは、それまでの経験の積み重ねで決まりますから、どれだけ人生においてさまよってきたからといって無駄なものはないのだなと、しみじみ思います。修了論文で培った知識が、どこかで生きたらいいな。



さて、どーしてもやらないといけないことが終わったので、これから修了論文の発表のための資料をつくりつつ、盛大に遊びつつ、大学院の準備のための読み物をします。まずは、IDEAS図書館にあった、この私得でしかない事典を読もうと思います。
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では、また。

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by ideas_blog | 2017-07-04 16:38 | 修了論文 | Trackback | Comments(0)

国際協力/途上国開発の専門家を養成するアジア経済研究所開発スクール(IDEAS/イデアス)27期日本人研修生(2016-2017)の生活を綴ったブログです。授業の様子や大学院・進路・奨学金情報をお届けします。IDEASの公式ホームページはこちら(http://www.ide.go.jp/Japanese/Ideas )海浜幕張駅から徒歩10分、見学も可能です。


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