人気ブログランキング | 話題のタグを見る

留学中の問題: 教員ストライキでの講義キャンセル

のりおです。すでにイデアス27期生のブログは私の留学記に変貌をとげていますが、気にせず続けます。


考慮するといってもどうしようもないのですが、日本ではまずないだろう留学中の問題にぶち当たったので、報告しておきます。


2月後半から3週間にわたって教員ストライキ講義がキャンセルになりました。



原因は教員組合がおこなっていた年金大幅カット拒否の交渉がこじれたこと。

授業はない、全ての授業外のセミナーもキャンセル、オフィスアワーもない、で非常に大変でした。
教員ストをサポートする学生は、大学にプレッシャーを掛ける、という理由で(理由になっていないと思いスルーしていましたが)大学の施設を使うな、と周りに呼びかけていました。じゃあ私のカフェ代を誰かが払ってくれるのか、というとそんなことはもちろんなく。

一部の教員は、学生への影響は最小限に留めるよう努力する、という一方で「すべての講義資料と文献はポータルサイトに上がっているから自分で勉強できるよね」、という言い方でストを正当化したので、生徒の間に不満が満ちていました。大学総長も対応がまずく、生徒の声を吸い上げる仕組みはないまま、皆が不安を感じていたと思います。


また、留学生の間では、「いや、金返せよ」という意見一択だった気がします。
ストにまつわる運動にからめて教育の商品化を批判する声もありましたが、こっちはイギリス・欧州学生の2倍を払うというとても大きな投資をしているわけで。

特に南米から自費留学している人たちが怒り戸惑っていました。彼らにとっては、15000ポンドって10年ローンだったりするわけです。この一年の留学は、彼らにとってどれほど大きな決断だったのでしょう。その中の一人が、クラスのSNSグループに投稿していたのが、以下。

留学中の問題: 教員ストライキでの講義キャンセル_e0367876_01125788.jpg

非常に的確に不満を表したステートメントだと思いました。

一方学生の自主的な活動は活発で、サセックス大学内にある開発の研究機関IDS の生徒たちは自主的にビデオを作ったりしていました。

そして、学生マーチ。
留学中の問題: 教員ストライキでの講義キャンセル_e0367876_01230178.jpg


サセックスの人類学が運営しているブログCULTURE AND CAPITALISMでは有志が講義の代わりに集まって開いたセミナーでつくられた"A quick manifesto"という主張がアップされました。



ちなみにフランスでもマクロン大統領の規制緩和に対するストによって、生徒がOccupy運動をくりひろげた(継続中?)らしく、学校が占拠されていたようです。 
留学中の問題: 教員ストライキでの講義キャンセル_e0367876_01050382.jpg
市民が不満を声に出し自分の権利を主張することによって生活を良くしてきた欧州では当たり前の風景なのかもしれませんが、もし3週間のストが起こるとわかっていたなら私はイギリスに進学したのか?ちょっと考え込んでしまいます。
しかし同じくらいの年齢、もしくはもっと若い英国人たちが主体的に様々な方法で大学当局と年金スキーム運営団体にむかって教育への権利を主張する姿を通じて市民社会・国民国家という言葉の体現を見られたことは良かったと思います。




# by ideas_blog | 2018-04-22 01:28 | 留学先から

イギリス大学院留学前にしておけばよかったこと、知っておきたかったこと

のりおです。ideas関係者に読んでいただくことは期待していませんが、備忘録・続です。

今回は「社会科学分野でイギリス大学院に進学するにあたって、予め知っておきたかったこと」です。

-合格のオファーを受け取ったらすぐに、基礎文献のリスト、前期の授業のリーディングリスト、授業の講師の名前と主要論文を要求して文献をかじる
私は学部時代と違う専攻にきたのとイギリス英語に慣れていないので、最初授業の20%くらいしか理解できなくてへこみました。授業で当たり前にでてくる基礎用語は先に知っておくべきでした。
先生たちは自分の研究範囲にからめて授業を展開することも多いので、彼らの論文に目を通して、興味範囲だとか言い回しだとかを知っておけばよかった、とも思います。後からオフィスアワーで話すときのためにもなりますし。授業ごとの講師の名前はウェブサイトに掲載されているシラバスにはかかれていない場合があるので、すぐに大学学部オフィスに問い合わせておけばよかったです。

-自分の興味のあるトピックの最前線を知る
授業が始まって、リーディングやプレゼンに追われているあいだに気がつけば期末考査やエッセイ提出がやってきます。しまった、エッセイのトピック考えていない...となると、そこからなかなか進まなかったりします。
研究を始めるには、まず、先行研究にどのようなものがあるか把握するために文献検索をして、学術論文について、文献リストを作ることが必要である。すでに研究されつくされた分野を、また研究しても無意味なので、まず、研究の最前線が何かを把握せねばならない。
-http://www2.rikkyo.ac.jp/~murase/database.htm


-授業開始1,2週間前にはついておいて、リーディングをしておく
私はメキシコでインターンをしていたためあまりにもギリギリについたので、常識からは外れてしまっているんでしょうが、最初のほうの授業で取り残されないように戦略的に早めについておくという考えを持っておけばよかったなと思います。
学校のアカウントIDを受け取ったら、学内のサイトからジャーナルなりE-Book(結構充実しています)を読み放題なので日本で英語の本を取り寄せて持ってきて、としなくて良くなります。
また、そもそも慣れに結構時間がかかります。銀行口座を開設したり携帯SIMを設定したり、どこのスーパーがいいだのデリバリーがいいだの探したり、作業場にできるカフェをみつけたり、通学のために自転車をかったり、まだ良い気候がかすかに残っている9月はじめのイギリスを楽しんだり、授業開始してすぐそちらに打ち込める基礎を作っておくと楽だったなと思います。

-為替を観察して、円高時に学費を払う
一昨年よりはましなんでしょうが、去年から今年にかけてもポンドの変動が大きく、貯金を目減りさせないように気を使わねばなりませんでした。XEのアプリを予め携帯に入れておいて、銀行口座を作ったら番号をtransferwiseにすぐ登録しておいて、送金したいときにすぐ対応できるようにしておけばよかったです。
大学院のコースは1年間。「あああ、ポンドが上がっている...」と落ち込んでいる暇はないのです。

-学割用カードや定期について調べておく
イギリスならNUScardという学生が小売店などで使えるカード(coop store、16-25card購入、長距離バス、ピザ・映画など娯楽) 、16-25rail cardという長距離列車のカードを当初に買っておくと後々気が楽です。

-Gumtree, spareroomなどシェアフラットサイトをながめておく
寮が、高い。最初は留学生らしく寮を見ていましたが、どこもレビューサイトではコスパがいまいち、騒音も不安でした。また私がon campusの寮にすむと、ほんとうに大学の敷地から出なくなるので、結局Airbnbで部屋を貸しているホストに長期契約を持ちかけました。治安が良いことはわかっていたし、ホストのレビューもよんだ結果、予め部屋を閲覧しなくても数ヶ月は耐えられるだろう、ということで決めました。しかしこちらに来てから、イギリスや欧州の学生はGumtreeなどのサイト、また学内・市内のカフェやオーガニックスーパーに張り紙がしてあるのでそれをみて住居を決めたりしていたと知りました。慣れていないと出来なさそうですが...そもそもそんな考えがありませんでした。
サセックス大学なら、Sussex University House Huntとかなんとかというfacebookページがあるのでそこで予め探すこともできたようです。

-日本の税金、年金の手続き
多分、普通留学に来られる方々はしっかりしていらっしゃるので、大丈夫だと思いますが、私のようにうっかりしていると書類が実家に少しずつ、しかし合計すると大量に来て大変なことになるかもしれません。予め出発前に市役所に赴いて手を打ちましょう。

-自分にあった論文整理方法を探しておく
授業が始まると、大学のポータルサイトに大量の文献が講師陣により投下されます。授業では扱わないけれど、これも興味あったらよんでね〜っていうものまであげてくれるのですが、学生としては、全ての情報を処理するのは、無理。
それゆえ、興味のあるものをリスト化しておいてのちのエッセイ作成時に読むなど
論文をレビューし情報をまとめる一連の作業手順についてはこのページ 「研究を支える文献データ整理法」がわかりやすかったです。この件については別記事でまとめますが、とりあえず一度「論文 情報収集 コツ」だとか「研究 論文 レビュー まとめ」とかでググってみるといいかと。

また何か思い出したら追加します。


さいきんいい天気の日も増えてきました。大学院の講義もあと1、2週間で全て終了。悔いのないようやりとげられますように。
イギリス大学院留学前にしておけばよかったこと、知っておきたかったこと_e0367876_23384970.jpg

# by ideas_blog | 2018-04-21 22:57 | 留学先から

ガーディアン記事: 開発業界で仕事を得るヒント

お久しぶりです、のりおです。灰色の空の下、最初の課題を終えました。


さて、最近読んだ記事が、大学院を考える段階で読んでおくといい記事だと思いましたのでここでシェアします。
仕事を探す段階で読むと、「先に知っておきたかった...」となりそうです。

なんらかの「専門性」を培って、それを生かす職種を業界内で探しましょう、と言っている人が多いです。
だから、必ずしも"development studies"のコースに行かなくても、いいと。
大事な点だと思います。

ガーディアンのworking in developmentシリーズもあわせてどうぞ。すごく皮肉が効いたもの(11 of the best aid parodies)もあります。

短いですが、今回は以上です。
では。



# by ideas_blog | 2017-11-25 11:06 | キャリアについて

ロバート・チェンバースの参加型ワークショップ

のりおです。


先日、ロバート・チェンバースの参加型ワークショップに行ってきました。
この方は開発業界、特に社会開発の分野にいる人なら皆名前を聞いたことがあるような先生で、
参加型開発手法を開発し、開発の現場に導入してきた大御所です。
ロバート・チェンバースの参加型ワークショップ_e0367876_00275675.png

英語のwikipediaの方が研究内容に詳しいですし、ここからご本人の論文にも飛べるので英語で読む体力のあるかたはこちらからどうぞ。
参加型開発についての概要はこちらを。 本もたくさんあるのでアジ研の図書館ウェブサイトなどで検索してみてください。


さてチェンバース氏主催の参加型ワークショップはこれまで3回機会があったのですが、今回のものは前回の参加者が「今回のが一番目からうろこだった(*英語を意訳)」と評しているような、視点を変える方法を学ぶ機会だったと思います。

こちらがチェンバース氏、御年85歳。しかし元気。ワークショップは朝から夕方までぶっ通しなのですが、それを土日2回に分けて一人で開催・仕切りきるのですから、驚嘆です。

ロバート・チェンバースの参加型ワークショップ_e0367876_00204632.jpg

今回のテーマは権力・立場関係について、また季節によって貧困具合が変わる場合の現実の捉えづらさについてのワークでした。
ロバート・チェンバースの参加型ワークショップ_e0367876_02484514.png

細切れのワークが1時間ごと程度にいくつもあり、それにその都度作られたグループごとに取り組んでゆく感じです。

ワークショップの内容を学ぶだけでなくて、チェンバース先生のワークショップの仕切り方などからも学習せねばと思い先生を観察していました。
手法はかなりアナログで、電化製品は一切使いません。スライドを見せるときのみ唯一、透明のフィルムに文字や図が書かれたものを光を通して壁に写す機材で行っていました。(そしてわたしはその機材の名前がわからない)

ロバート・チェンバースの参加型ワークショップ_e0367876_00222883.jpg

IDSとGlobal Studiesそれから教育学の方面からも、開発に関わる修士課程以上の学生が皆集う機会、いろいろな人に会えるのも面白かったです。IDSはサセックス大学の中にはありますが、それ自体は独立した研究機関で、学生も職務経験を持っている人がほとんど、政府からの派遣の人も多い大学院です。しかしそれ以外の学部では学部から上がってきている人も多いので、年齢層も多様でした。そんなメンバーが床に座り込んであーでもないこーでもないと紙をペンを手にワークをするのは、きっとオフィスなどでは難しいでしょう。参加型開発の手法はホワイトカラー(候補者)が仲間意識を高めるためにも有効でした。休憩時間にはコモンルームにコーヒーとビスケットが準備されており、これもきっと参加型ワークショップの仕掛けの一つなんではないか、、、と思っています。ちゃんと本を読んで見なければ。
ロバート・チェンバースの参加型ワークショップ_e0367876_00242772.jpg
そんなこんなで、秋は更けていきます。
皆様お風邪など引かず、お元気でお過ごしください。




# by ideas_blog | 2017-10-29 10:21 | 開発について(経済開発/社会開発)

サセックス大学の開発学: セミナーがウェブ動画で配信されています

のりおです。
サセックス大学内にある研究、大学院教育機関IDSと、Global Studiesなど主催のセミナーシリーズがウェブ動画で配信されており、一般の方でもどのような発表が行われているのか覗き見ることができるので、お知らせに上がりました。

"Decolonising development (開発を脱植民地化する)" が今期のセミナーのテーマ。
めちゃめちゃざっくりというと、開発は基本的に先進国(第一世界/North)が途上国(第三世界/South)に向けて行うもの。その中で、植民地主義と同じような思想で開発を進めていませんか、と問うものです。以上だけだとあまりにも言葉足らずなのでwikiでも読んでみてください。
参考: 新植民地主義[wikipedia]


ちなみに、DecolonisationやPost-colonisationというのはIDSやGlobal Studies界隈でよく聞かれるキーワードです。

ご参考までに、こちらは、参加型開発で名高いロバート・チェンバース氏のワークショップで黒文字の「コンテキスト」を見て思いつくキーワードを書き出してゆくワークショップの作業用紙です。IDSでどのようなトピックがどのような立場で語られているかがなんとなく見えますね。
サセックス大学の開発学: セミナーがウェブ動画で配信されています_e0367876_06522575.jpg

初回のトピックはこちら。

サセックス大学の開発学: セミナーがウェブ動画で配信されています_e0367876_01084189.jpg

ヨーロッパ・北米そしてそれらの植民地の近代化とそれに伴う理論や学問分野の発展を概観するのですが、その中でいかに社会学・哲学・人類学が植民地主義の思考に偏っていたかという批判が趣旨でした。近代化と一概にいっても、そもそも何なのか、ということを改めて自分に問いかける機会となりました。multiple modernityという言葉、初めて聞きましたが、もはや近代化が西洋(またこうやって一絡げにするのも語弊がありますが)だけのものではない中で、あってしかるべき概念ですね。

さて、私の疲れた頭の絞り出すつたない感想よりも、実際の講演を聞くほうが良いかと思います。
セミナーは、FacebookでLIVE放映されていました。録画された映像はこちらにアップロードされているので後からでも視聴することができます。
サセックス大学の開発学: セミナーがウェブ動画で配信されています_e0367876_01082849.png


全部イギリス英語で、しかもプレゼン資料もないのでなかなか全部理解するのは大変かと思います。(わたしも全部は理解できていません。「講義」ではないので、オーディエンスがそれなりの知識を持っている前提で理論の名称や研究者の名前をバンバン出してくるので。ググりながら聞いてました。)
しかし前半はわかりやすいと思いますし、また最後の質疑応答は現代イギリスの"citizenship"について具体的に話していたりして特に面白いと思います。

追記: ブログとして講演の報告記事がまとめられています!http://www.ids.ac.uk/opinion/decolonising-our-minds



今後のこのセミナーシリーズの予定は以下の通りです。 私は次回のアンドレア・コーンウォール教授(Global StudiesのHeadです)のセミナーが非常に気になっているので彼女の論文など事前に読んでおこうと思います。
サセックス大学の開発学: セミナーがウェブ動画で配信されています_e0367876_01150436.png


おそらく次回もfacebook liveでの中継も行われると思うので、詳しくはIDSのウェブサイトかfacebook ページを覗いてみてください。
(ブライトンに来てから、イベントやコミュニケーションのツールとしてのfacebookの覇者っぷりをすごく感じています)

サセックス大学の開発学: セミナーがウェブ動画で配信されています_e0367876_07122858.png

では。





# by ideas_blog | 2017-10-27 02:17 | 開発について(経済開発/社会開発)

国際協力/途上国開発の専門家を養成するアジア経済研究所開発スクール(IDEAS/イデアス)27期日本人研修生(2016-2017)の生活を綴ったブログです。授業の様子や大学院・進路・奨学金情報をお届けしていました。


by IDEAS_student_blog